クエン酸シルデナフィルについて

クエン酸シルデナフィル (sildenafil citrate) はファイザーが製造.販売する勃起不全 (ED) の治療薬。一般には商標名であるバイアグラ (Viagra) という名称が用いられている。

開発史

もともとシルデナフィルは1990年代前半、狭心症の治療薬として研究.開発が始まった。第1相臨床試験において、狭心症への効果は僅かであるが陰茎の勃起を促進する作用が認められ、これを適応症として発売されることとなった 。

1998年にアメリカ合衆国で販売を開始。発売直後からマスコミやインターネットなどで「夢の薬」「画期的新薬」と騒がれ、日本にも多くの個人輸入代行業者の手によってもたらされるようになった。

このような事情からか、この手の新薬としては極めて異例な短期間で当時の厚生省の製造承認が下り、1999年1月25日に日本でのバイアグラの製造が正式に承認され、同年3月23日よりファイザーから医療機関向けに販売された。

作用機序

バイアグラ(シルデナフィル)は、生体内で環状グアノシン一リン酸 (cGMP)の分解を行っている5型ホスホジエステラーゼ (PDE-5) の酵素活性を阻害する。これが陰茎周辺部のNO作動性神経に作用して血管を拡張させ、血流量が増えることによって機能すると考えられている。

勃起不全の症状がある場合、この薬(錠剤)を性行為の30分くらい前に服用すると陰茎が勃起し、性行為が正常に行える。但し陰茎に対する適切な物理的刺激がない場合には勃起は起こらない。また性的な気分を高揚させる効果はない。この薬は陰茎の勃起に効果はあるものの精液の量を増やす効果はなく、射精時にあまり精液が出ない、いわゆる「空撃ち」状態になると射精の快感は半減する。

その他の心血管系作用

シルデナフィルは陰茎に限らずNOを介した血管拡張を促進する作用がある事から、現在種々の疾患に対する適応が研究されている。その例としては、 慢性心不全、 肺高血圧症(特に新生児(心室中隔欠損症や動脈管開存症) や開心術中.術後、 急性肺傷害など)がある。

副作用

ただし、この作用メカニズムは心臓病の治療に用いるニトログリセリン等の硝酸塩系薬剤と同様のものであるため、副作用として血圧の急激かつ大幅な低下や、心臓への酸素供給に支障をきたす狭心などがあらわれることがある。特に同薬服用時に狭心発作に見舞われ、救急病院に搬送された際、服用者が同薬使用を告げずに硝酸塩系薬剤を投与され、症状が悪化.最悪の場合には死亡するケースも見られる。

ファイザー側はこの同薬に関する問題に対して、医師.薬剤師への禁忌情報の提供を行うと共に、錠剤パッケージ裏にニトログリセリン等硝酸塩系薬剤との併用が出来ない旨を記載している。

「滋養強壮」「精力強壮」を謳った健康食品.サプリメントのなかには、シルデナフィルを含むものもあり、厚労省が注意を喚起している。

米FDAは2007年10月18日、男性性的不全治療薬の服用で突発性難聴になる恐れがあると警告し、ファイザー(バイアグラ)、イーライリリー(シアリス)、バイエル(レビトラ)の3商品に対し、品質表示ラベルや説明書にリスクを詳しく記載するよう求める方針である。

バイアグラに絡む社会現象

なお日本国内の医療機関で処方されている剤形は、25 mg 錠または50 mg 錠(一錠に 25 mg ないしは 50 mg の有効成分が含まれる)だが、ファイザーが米国等海外に於いて製造.発売している剤形には、100 mg 錠もある。しかしこの 100 mg 錠は日本国内での製造承認は出ておらず、医療機関では処方されていない。

日本で正規に入手するためには医師の処方箋が必要な上、健康保険の適用外で自由診療(保険外診療)のため、各医療機関が価格を定めることができるが、1錠およそ1,500円程度となっている。一方、用途の関係から医療機関や薬局へ出向くのが恥ずかしいこともあり、依然として個人輸入代行業者による販売が行われている。こうした業者の販売する薬物からは、偽物が発見される事もある。

スパム関連

勃起不全は男性にとって、アイデンティティへの脅威であると共に、専門医に対しても相談しにくい症状である。このためインターネット上の通信販売等に於いては一定量の市場が存在する。その一方で、迷惑メール等の宣伝行為を行う前出の個人輸入代行による業者も多く、これら業者の活動が一般のインターネット利用者からは問題視される事態も発生している。

特に迷惑メールでは、無差別に送信される事もあり、また用途(性行為に関する不具合を改善する治療薬)に絡んで、本来これらの情報に触れるべきではないと考えられている児童等に対しても同種の広告が届く事もあるため、ネット上の社会問題となっている。一方、同薬の効能が世間に広く知られるにつれ、ニセの薬品を高値で売りつける業者もあるとされ、こちらも問題となっている。

また日本国内では販売が認可されていない 100 mg 錠を扱う業者もあり、2003年10月6日には同錠を扱った仙台市の業者が逮捕される事件も発生している。

コピー版バイアグラ

成分がバイアグラと同等とされる薬品も発売されている。インドのajanta社が製造しているカマグラ、RANBAXY社のカベルタ、Zydus Alidac社のペネグラを始め、複数のものが発売されている。一般的に医薬品に関する特許には「成分特許」と「製法特許」の2種類があるが、インドでは「成分特許」が認められていないため、製法さえ異なれば成分が全く同じ物であっても合法的に薬品を製造販売することが可能である。そのためインドではこれら多くのコピー薬品が作られ正規の薬品よりも安価で販売されている。効果は殆どバイアグラと同じであるが、価格は概ね3分の1ほどである。これらもバイアグラ同様、インターネットなどで個人代行輸入業者が取り扱っている。なお、バイアグラ自体の特許は依然有効であるので、これらはいわゆるジェネリック医薬品ではない。これらのコピー薬を業として日本に輸入することは「特許発明の実施」とみなされ、特許法違反である。また、国内での販売は薬事法による取締りの対象となる。

インド等で合法的に製造されている薬とは別に、ファイザー社のバイアグラに似せた偽造品(「Pfizer」「VGR 100」などと書かれた青色の錠剤)も出回っている。シルデナフィル含有量や製造過程での衛生管理.品質管理に問題のあるものも多い。

 

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